「博物館」という言葉を市井の日本人が耳にしたとき、小学校や中学校の科目で言うと社会科に関する資料を展示してたりする施設をまず思い浮かぶと思う。展示物が美術品であれば美術館、動物がいるのは動物園、海の生き物は水族館、科学中心だと科学館、といったかんじでそれぞれ別の言葉があるから、それ以外のもの、特に社会科に関するものが博物館といったイメージが強いと思う。
一方で、日本において博物館を定義している法令の一つ、博物館法第2条によると、博物館とは「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、併せてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関」であり、図書館以外で、かつ所定の登録を受けたものをいうとされている。
つまり、「博物館」には美術館も動物園も水族館も科学館も含まれると言える。ふしぎ。
とはいえこの定義は日本国内のものであるし、例えば海の向こうの言葉である英語での定義について考えてみると、「博物館、記念館、美術館、展示館」をまとめて意味する「museum」といった単語があり、そして動物園のみを意味する「zoo」、水族館のみを意味する「aquarium」といった言葉がある(Weblio英和辞典より)。個人的には英語のこの区分けはけっこうしっくりくるかも。
前置きが長くなったけど、最近(昨年から現在にかけて)行ったmuseum、つまり博物館や美術館などについて書く。
なお、博物館法では、指定の条件全てを満たした正真正銘の「登録博物館」と、条件はクリアできないが博物館相当であると行政に指定された「博物館に相当する施設(指定施設)」、そしてその二つのどちらでもないもの(「博物館類似施設」と呼ばれることが多い)の3つに分類される。それについても少し触れる。
行った順で書く。
大阪歴史博物館
訪問した2022年3月当時は大学の在籍中だった(その3月に卒業だった)けど、学生証持ってくるの忘れたから個人一般料金でチケット購入した。
谷町四丁目にある。
設置者は大阪市。登録博物館。
古代〜近現代の大阪の歴史を広く知ることができた。面白かった。
龍谷ミュージアム
前の大学で最後に使った学生料金。
龍谷大学のキャンパスのすぐそばにある。仕事での出先の近くで、ちょっと時間あったから寄った。
設置者はたぶん学校法人龍谷大学。
余談ながら、前述の博物館法において、以前博物館を設置できる団体の種類が定められていて、そこには学校法人が含まれておらず、龍谷ミュージアムは「博物館に相当する施設」とされている(京都市教育委員会が平成29年3月28日に指定)。しかしながら、博物館法の今年4月1日施行の改正(令和4年法律第24号)によってその要件が無くなったため、今後「登録博物館」となる可能性がある。
仏教の伝来についての展示と、あと収蔵してるありがたみのありそうな仏像とか曼荼羅とかがたくさんあった。仏教よくわかってへんけど、曼荼羅はなんかかっこいいから見てて楽しい。
とはいえ、ある程度仏教というか浄土真宗本願寺派について勉強してから行ったほうがよかったかも…。
物流博物館
品川駅から坂を登った高輪の住宅街にある博物館。
設置者は公益財団法人利用運送振興会。もともと日通の社内史料室みたいなかんじだったらしいけど、それを拡張して、建物も専用のところに移して、公益財団法人を作って、正式に登録博物館としたっぽい。設置に至る熱量がすごくて、日通の担当者さんをとても尊敬する。
中の資料も殆どが日通所有のものっぽい。
物流の歴史や現在について学ぶことができる。
品川駅の反対側にあるヤマト運輸の類似施設に比べたらちょっと古くて規模は小さいけど、味があってちゃんと「博物館」していて良かった。
食とくらしの小さな博物館
物流博物館からちょい北の同じく高輪エリアにある。
味の素の研修センターの一部が無料一般開放されている雰囲気。博物館と名称にあるが博物館法上の博物館ではなく博物館類似施設。
小さいながらも中は綺麗で、味の素社の歴史を軸に、日本の近世以降の食文化の歴史を学ぶことができる。
田辺城資料館
舞鶴といえば東舞鶴の明治以来の軍港や赤レンガ倉庫が有名だが、西舞鶴は16世紀からこの田辺城があって城下町が賑わっていたらしい。
そんな舞鶴の側面を知れることができた。
国立東京博物館
上野公園にある国立博物館。
設置者は独立行政法人国立文化財機構。同機構の「国立博物館」は4つあり、そのうちの1つ。ちなみに東京のほかは京都、奈良、九州。
国立博物館ってことで、現代日本の中央政府が指導する教科書にのってるような歴史に沿った展示であるということができるし、そういった教科書に載ってるような有名な史料の原本を見ることができる。たのしい。
国立民族学博物館
吹田の万博記念公園にある。
設置者は大学共同利用機関法人人間文化研究機構。
世界のいろいろな民族についての収集品について見ることができる。じっくりちゃんと映像も全部見ようと思ったら丸1日はかかる。でかい。多い。
今回挙げる博物館の中で、あえて一番を挙げるならここ。あらゆる人に両手放しでお勧めできる。
日本郵船歴史博物館
現在休館中。
横浜の桜木町やら関内やら赤レンガ倉庫とかのそのへんにある。
日本郵船社の企業内博物館。ここも博物館と名はつくが博物館類似施設にあたる。
今年3月いっぱいで休館になるとのことで、駆け込みで行った。建物のメンテナンスがあるから休館になるらしい。
日本郵船の歴史を中心に、日本の貿易についての歴史について展示されていた。
海上保安資料館 横浜館
https://www.kaiho.mlit.go.jp/03kanku/kouhou/jcgm_yokohama/
横浜の赤レンガ倉庫のあたりにある。
海上保安庁の資料館。
2001年に海上保安庁が交戦した北朝鮮の不審船が展示されている。
インターネット上では「初デートで行くべきではないスポット」として有名だが、個人的には別にいいのではないかと思う。サラっと見るなら10~20分くらいで回れる内容。
九州国立博物館
設置者は東京国立博物館と同じく、独立行政法人国立文化財機構。
東京国立博物館に比べて、やや九州・沖縄といった西日本寄りな展示内容。とはいえ日本の歴史を幅広く学べる内容。福岡県に所在するということもあり、アジア圏を中心とした海外との繋がりについての内容も多め。
大阪市立住まいのミュージアム
愛称は「大阪くらしの今昔館」
天六にある。
設置者はおそらく大阪市。博物館に相当する施設(指定施設)。
近世〜現代にかけての大阪の歴史を、住宅に焦点を当てて展示してある。
中に江戸時代の大阪の街を実物大で再現しているフロアがあって、写真撮ったりできて楽しかった。
大阪市、何気にこういう公立博物館を何個も設置していて素晴らしいと感じる。首長や市議会にムダ扱いされて削減されませんようにと願いながら、学生料金で入場券を買った。
三井記念美術館
東京の日本橋あたりにある。
設置者は公益財団法人三井文庫。登録博物館。
三井財閥の三井家が所有する史料を所蔵する美術館ではあるが、常設展はなく企画展のみで、所蔵品の全容はよくわからなかった。
館の入居している建物が重要文化財指定されている三井本館であり、その建物に損傷を与えないように展示を行っている点が良かった。
まとめ
去年〜現在は一人で田舎をぷらぷらする感じの旅行をあんまりしなかったため、東京や大阪等の大都市の近くが多かった。
一昨年(2021年)に行った田舎の博物館まとめも忘れないうちに書き残したくもある。